マジック回顧録 その4
マジック回顧録 その4
マジック回顧録 その4
初の大会出場から1ヶ月後、大型エキスパンション「ミラディン」が発売された。

新しい大型エキスパンションの発売は、いつの時代もエキサイティングな出来事だが、この「ミラディン」は特に強力で魅力的なカードに溢れていた。

後に、この「ミラディンブロック」から大量の「禁止カード」を輩出することになるのだが、第2エキスパンション「ダークスティール」が発売する前までは、極めて健全なメタゲームであった。

そのことについては次回記述しよう。





さておき、私が環境初期に作ったデッキは「メガトグ・シュート」というオリジナルデッキだった。


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【メガトグ・シュート】

4 メガエイトグ

4 発展のタリスマン/Talisman of Progress
4 威圧のタリスマン/Talisman of Dominance
2 耽溺のタリスマン/Talisman of Indulgence
3 稲妻のすね当て/Lightning Greaves
4 物読み/Thoughtcast
4 知識の渇望/Thirst for Knowledge
3 星の嵐/Starstorm
3 ルーンの解読/Read the Runes
3 滅殺の命令/Decree of Annihilation

4 古えの居住地/Ancient Den
4 教議会の座席/Seat of the Synod
4 囁きの大霊堂/Vault of Whispers
4 大焼炉/Great Furnace
2 伝承の樹/Tree of Tales
4 空僻地
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「アーティファクト土地」と「タリスマン」を生け贄に捧げ、巨大になった「メガエイトグ」に「稲妻のすね当て」で速攻を与えるという、「ワンショットキル・コンボデッキ」だ。

スタンダードのローテーション直後は、オンスロートブロック構築で実績を残していた「赤白サイクリング」と「ゴブリン」が主流になると予想できた。
「滅殺の命令」と「星の嵐」は、それらに対する切り札になると考えた。

また、サイドボードには「赤の防御円」対策として「ブルードスター」を4枚用意していた。


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メガエイトグ (4)(赤)(赤)
クリーチャー — エイトグ(Atog)
アーティファクトを1つ生け贄に捧げる:メガエイトグは、ターン終了時まで+3/+3の修整を受けるとともにトランプルを得る。
3/4
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Lightning Greaves / 稲妻のすね当て (2)
アーティファクト — 装備品(Equipment)
装備しているクリーチャーは速攻と被覆を持つ。
装備(0)
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滅殺の命令 (8)(赤)(赤)
ソーサリー
すべてのアーティファクトとクリーチャーと土地と、すべての墓地にあるすべてのカードと、すべての手札にあるすべてのカードを追放する。
サイクリング(5)(赤)(赤)
あなたが滅殺の命令をサイクリングしたとき、すべての土地を破壊する。
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星の嵐 (X)(赤)(赤)
インスタント
星の嵐は、各クリーチャーにX点のダメージを与える。
サイクリング(3)
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ブルードスター (8)(青)(青)
クリーチャー — ビースト(Beast)
親和(アーティファクト)(この呪文を唱えるためのコストは、あなたがコントロールするアーティファクト1つにつき(1)少なくなる。)
飛行
ブルードスターのパワーとタフネスは、あなたがコントロールするアーティファクトの数に等しい。
*/*
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その数週間後、再び「マナソース金工大店」で大会が開催されることになっていたので、再び米町さんとともに出場した。


大会では、想定通り「赤白サイクリング」と「ゴブリン」にぶつかり、「赤の防御円」に対しても「ブルードスター」が見事に活躍した。


「4-0」の戦績で、再び優勝することが出来た。





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この日、私のマジック人生において、最も重要な出来事があった。

私の師匠となる、「あばたさん」との出会いだ。

あばたさんのマジック仲間であった米町さんが、私を引き合わせてくれたのだ。





あばたさんは、北陸のマジック界において、長年、後進の育成やコミュニティの活性化に尽力した立役者だ。

北陸の競技マジックの最前線で活躍するプレイヤー達からもよく知られた存在で、実力も確かなものだ。

贔屓目かもしれないが、リミテッドの技術では北陸で5本の指に入っていたと思う。





私はそれまでのマジック人生で、「リミテッド」という競技には一度も触れたことが無かった。

後日、あばたさんが主催する練習会に参加し、ミラディンの「ブースタードラフト」を初めて体験することになる。

私はすぐにその魅力の虜になり、その日から毎週のようにブースタードラフトに興じることとなった。





リミテッド初心者の私にとって、「ミラディン×3」のブースタードラフトを最初に体験できたのは僥倖だった。

この環境は、リミテッドに必要な技術を学ぶのに適していた。

理由はいくつかある。

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1)セオリー通り、ピックにおいて「シグナル」が重要な環境である。

例えば「ラヴニカブロック」のドラフトでは、シグナルがほとんど意味をなさない。多色を推進する環境では、時々こういうことがある。
「ミラディン」には無色のカードも多いが、結局のところ「単色の強いカード」が中心だ。
ピックにおけるシグナルの重要さは、ドラフトの基本に忠実だ。


2)「アーキタイプ環境」である。

ミラディンには、「装備品+猫」や「親和」、「サクリファイス」など、コモンのみで強いアーキタイプを構築できる要素がある。
こういう環境は、レアに依存しなくとも、強いデッキを組むことが出来る。

逆の例を挙げるならば、「基本セット」のリミテッドはバニラクリーチャーが多く、シナジーが薄いため、強いアーキタイプを作りづらい傾向がある。
結果的に、「爆弾レア」への依存度が高い環境となる。

「アーキタイプ環境」では、ピックを進めるうちにカードの点数が大きく変動する。
高度なピック技術が求められるため、やればやるほど上達できる。


3)コンバットトリックが豊富である。

「装備品」が幅を利かせているので印象が薄いかもしれないが、実は「ミラディン」には「軽いコンバットトリック」が多数収録されている。
リミテッドにおける「戦闘」の心得を学ぶうえでも、適した環境と言える。

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かくして私は、乾いたスポンジの如くリミテッドの技術を習得していった。








あばたさんには、リミテッドにおける様々な技術を教えてもらった。
ドラフトの「ピック」の技術はもちろんだが、リミテッドにおける「戦闘」のイロハを習得できたことも大きかった。

あばたさんがリミテッド巧者として認知されていた最大の理由は、ひとえにその「戦闘」の技術だ。
師にかかれば、「畏敬の一撃」すら8点級のカードになってしまうと言われるほどだ。
もちろん私も、幾度となくこのインスタントの餌食となった。

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畏敬の一撃 (白)
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。このターン、それが次に与えるすべてのダメージを軽減する。あなたはこれにより軽減されたダメージに等しい点数のライフを得る。
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「ミラディン×3」のドラフトについて、もう少し踏み込んだ話をしよう。

当時の私たちは、「緑は弱い」と考えていた。
本来、リミテッドにおける緑の強みは「クリーチャーのサイズ」だが、この環境では「装備品」の存在ゆえに、その優位点を活かすことが出来ない。

(ちなみに、カードパワーでは「黒」もかなり弱いのだが、黒にはアーティファクトシナジーが多かったので、緑よりは使いやすかった。アーキタイプの構成要素になりにくい緑は、嫌煙されがちだった。)

一方で、ミラディン最強の「爆弾レア」は、その「緑」に存在していた。
「腐食ナメクジ」と「グリッサ・サンシーカー」だ。

この環境で緑をピックする条件は、これらの「爆弾」を初手で引くか、あるいは3手目以降に「解体」が回ってくるか、おそらくそんなところだろう。

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腐食ナメクジ (3)(緑)(緑)
クリーチャー — ナメクジ(Slug) ビースト(Beast)
各プレイヤーのアップキープの開始時に、そのプレイヤーはアーティファクトを1つ生け贄に捧げる。
4/6
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グリッサ・サンシーカー (2)(緑)(緑)
伝説のクリーチャー — エルフ(Elf)
先制攻撃
(T):アーティファクト1つを対象とする。その点数で見たマナ・コストが、あなたが持っている未使用のマナの総量に等しいなら、それを破壊する。
3/2
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解体 (2)(緑)
ソーサリー
アーティファクト1つを対象とし、それを破壊する。(緑)(緑)(緑)を加える。
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そんな中で、あばたさんは「ファングレンの狩人」を高く評価していた。

一般的に、装備品の存在によってサイズの優位を活かしにくい「ファングレンの狩人」は、あまり評価が高くなかった。
ところが、実はミラディンのクリーチャーの基本サイズは、アンコモンを含めてもそれほど大きくない。
「ファングレンの狩人」に並べるのは、「マイアの処罰者」くらいなものだ。

さらに、除去は「アーティファクト破壊」が優先されるため、「ファングレンの狩人」を除去する手段はそれほど多くなかった。

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ファングレンの狩人 (3)(緑)(緑)
クリーチャー — ビースト(Beast)
トランプル
4/4
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マイアの処罰者 (7)
アーティファクト クリーチャー — マイア(Myr)
親和(アーティファクト)(この呪文を唱えるためのコストは、あなたがコントロールするアーティファクト1つにつき(1)少なくなる。)
4/4
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あばたさんのコンバットトリックの強さの秘訣は、美しいマナカーブによる「テンポアドバンテージ」は当然のことだが、同時に「クリーチャーの質が高い」ことが重要なポイントだった。

「戦闘におけるコンバットトリックは、相手のクリーチャーよりも自分のクリーチャーの質が高い場面でこそ、真価を発揮する。」

これは、私があばたさんから学んだ中で、最も重要な教えの一つだ。
クリーチャーの質が高ければ、たとえ「畏敬の一撃」のような弱いコンバットトリックでも、十分に相手の戦線を崩壊させることが出来るというわけだ。

ミラディン環境における「ファングレンの狩人」は、あばたさんの戦闘理論を体現できるクリーチャーであり、私を含めて多くのプレイヤーが、このビーストの前に敗れていった。


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時は流れ、2004年2月。
新たなエキスパンションが発売された。

かの悪名高き「ダークスティール」だ。

そして、「日本選手権予選」のシーズンが開幕した。




次回、【スカルクランプの夏】に続く。

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