マジック回顧録 その12
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マジック回顧録 その12
前回
https://79315.diarynote.jp/202006091440041602/




北陸から東京まで遠征するには、かなりの距離を車で移動する必要があった。

当時は北陸新幹線など存在しなかったし、何より金の無い私たちには大勢で車で移動する以外に道が無かったのだ。



運転要員は、あばたさんか太田さんだ。
彼らがいなければ、私たちはプレミアムイベントにこれほど頻繁に参加することは出来なかっただろう。

ちなみに当時の私は運転免許すら持っていなかった。



移動中の車内で、私たちがよく使った暇つぶしは、「マジックのカード名しりとり」だ。

マジックプレイヤーの多くは、きっと一度は経験しているだろう。

懐かしのカード名が飛び出すことも多く、長くマジックに没頭している人間ほど楽しめる。

まさに、私たちにはうってつけの遊びだった。







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ファイナルズは、「その年の日本最強構築王を決定するための大会」と銘打たれており、スタンダードとエクステンデッドによる複合フォーマットで開催されていた。
当時のプレイヤーにとっては、日本選手権本戦に次ぐ憧れのトーナメントだったと言っても過言ではないだろう。

北陸からは数名の予選突破者とレーティング上位者が出場した。
その中には、私、佐藤さん、あばたさんの3名が含まれていたのだ。




私たちにとって、最大の課題はエクステンデッドだ。

当時の北陸は、スタンダード以外の構築大会が開かれることはほとんど無く、エクステンデッドの大会など皆無であった。

「エクステンデッド愛好家」を自負していた私ですら、大会の出場経験は一度も無かったのだ。




とはいえ、前回の「プロツアーロサンゼルス」や「グランプリ北九州」からカードプールに変更はない。

ファイナルズの2週間前には「世界選手権05」も開催されたが、そこでもエクステンデッドのメタゲームに大きな変化は無かった。

これらのプレミアムイベントの結果が大きく反映されるだろうと考えていた。




ところが、エクステンデッドのメタゲームは、ファイナルズ本戦の一週間前になって激変することになる。

アメリカ人プレイヤー「John F. Rizzo」が、新型の発掘デッキ『フリゴリッド』を誕生させてしまったからだ。


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【フリゴリッド】※グランプリシャーロット優勝

4 ゴルガリの墓トロール/Golgari Grave-Troll
4 臭い草のインプ/Stinkweed Imp
4 朽ちゆくインプ/Putrid Imp
4 サイカトグ/Psychatog
4 イチョリッド/Ichorid
2 不可思議/Wonder

4 トレイリアの風/Tolarian Winds
4 ゾンビの横行/Zombie Infestation
4 綿密な分析/Deep Analysis
4 陰謀団式療法/Cabal Therapy
4 金属モックス/Chrome Mox

1 沼/Swamp
4 湿った墓/Watery Grave
4 セファリッドの円形競技場/Cephalid Coliseum
4 汚染された三角州/Polluted Delta
3 血染めのぬかるみ/Bloodstained Mire
2 草むした墓/Overgrown Tomb

サイドボード
4 炎まといの天使/Firemane Angel
4 一瞬の平和/Moment’s Peace
3 天啓の光/Ray of Revelation
4 棺の追放/Coffin Purge
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『フリゴリッド』は、世界選手権のエクステンデッド部門で数名が使用していたが、その一週間後に開催された「グランプリシャーロット」でトップ8に3人も送り込んだことで、一躍有名になったアーキタイプだ。



しかし、リストを眺めても、どう戦うデッキなのかさっぱり分からない。

なんで「イチョリッド」なんか入ってるんだ?
さすがにネタカードじゃないのか!?

そう叫びだしたくなるほど、このデッキリストは私たちの理解を超えていた。
ぶっちゃけ「弱い」とさえ思っていた。


フリゴリッドの躍進を知ったときには、ファイナルズ本戦まであと数日。
私たちは『フリゴリッド』のテストをすることもなかった。



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イチョリッド (3)(黒)
クリーチャー — ホラー(Horror)
速攻
終了ステップの開始時に、イチョリッドを生け贄に捧げる。
あなたのアップキープの開始時に、イチョリッドがあなたの墓地にある場合、あなたは自分の墓地にあるイチョリッド以外の黒のクリーチャー・カードを1枚、追放してもよい。そうした場合、イチョリッドを戦場に戻す。
3/1
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佐藤さんは『ゴブリン』をエクステンデッド部門に持ち込んだ。
デッキ制作者はツナギさんだ。

ハチメンバーは「オンスロートブロック構築」の時代から『ゴブリン』をとことん研究しており、ほぼ全員がプレイングに精通していた。

山岸さんに至っては「グランプリ新潟03(オンスロートブロック構築)」でトップ4に上り詰めるほど、ゴブリンを極めていた。

もちろん、佐藤さんも一通りのプレイングは習得している。


富山のアツヲといい、北陸には「ゴブリン使い」が多いのかもしれない。

ちなみに私のゴブリンはドヘタクソだ。





あばたさんは『親和』を選択した。

「エクステンデッドではブン回りがあるデッキを使いたい」と言っていたあばたさんにとって、『親和』は当然の選択だったのかもしれない。

エクステンデッドはカードプールが広いため、スタンダードのときよりも『親和』に対して致命的な対策カードがいくつか存在していた。
結果、『親和』はメタゲームの一角を担うものの、支配的な強さとは言えなかった。



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さて、問題は私だ。

正直なところ、エクステンデッドで何を使おうか、本当に悩んでいた。

私に「親和」や「ゴブリン」を使いこなせるはずもない。「サイカトグ」や「セプターチャント」も同様だ。

当時の私は「ループジャンクション」という「無限ライフコンボデッキ」が好きだったのだが、ローテーション後はそれらのコンボデッキがほぼ壊滅していた。

【ループジャンクション】
http://mtgwiki.com/wiki/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3





最終的に、「悩んだときは、使って楽しいデッキを選べば後悔しない。」という鉄則のもと、相棒『ウルザトロン』を使用することに決めた。


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【緑白ウルザトロン】


4 桜族の長老/Sakura-Tribe Elder
1 鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker
1 レオニンの高僧/Leonin Abunas
1 白金の天使/Platinum Angel
1 隔離するタイタン/Sundering Titan
2 永遠の証人/Eternal Witness
4 歯と爪/Tooth and Nail
4 森の占術/Sylvan Scrying
3 刈り取りと種まき/Reap and Sow
2 団結のタリスマン/Talisman of Unity
2 精神隷属器/Mindslaver
4 師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top
3 一瞬の平和/Moment’s Peace
2 正義の命令/Decree of Justice
3 忘却石/Oblivion Stone
4 吹きさらしの荒野/Windswept Heath
4 森/Forest
1 平地/Plains
1 すべてを護るもの、母聖樹/Boseiju, Who Shelters All
4 ウルザの魔力炉/Urza’s Power Plant
4 ウルザの鉱山/Urza’s Mine
4 ウルザの塔/Urza’s Tower
1 平穏な茂み/Tranquil Thicket


1 正義の命令/Decree of Justice
1 一瞬の平和/Moment’s Peace
1 精神隷属器/Mindslaver
4 帰化/Naturalize
4 ロクソドンの教主/Loxodon Hierarch
4 法の定め/Rule of Law

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確かこのようなリストだ。

当時のメタゲームではかなりの少数派であったし、ファイナルズ本戦では私以外に2名しか使用していなかった。

それでも、グランプリシャーロットのトップ4に入ったことで、徐々に頭角を現していた。



「ファイナルズ05」の記事はほとんどリンク切れになっているが、メタゲームブレイクダウンは今でも見ることができる。

【ファイナルズ05 エクステンデッドメタゲーム(タカラトミー)】
http://web.archive.org/web/20090218022851/http://mtg.takaratomy.co.jp/tc/finals/20051224/da2breakdown.html


この記事によれば、メタゲームの最有力は『ボロス』、『親和』、『フリゴリッド』の3つだ。

プロツアーの頃に比べ、『サイカトグ』をはじめとするコントロールデッキがかなり少なくなっている。おそらく『フリゴリッド』の影響によるものだ。



これら3つのアグロデッキに対し、私の『ウルザトロン』は有利なポジションにいた。

『ウルザトロン』の本質は、「歯と爪」を高速でキャストすることを目的にしたコンボデッキだ。
キャストターンは4~5ターン目であるため、高速のアグロデッキに対しては間に合わないことが多かった。

ところが、エクステンデッド環境には「一瞬の平和」が存在するため、『ウルザトロン』はアグロデッキのキルターンを2ターンも遅らせることが出来るのだ。


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一瞬の平和 (1)(緑)
インスタント
このターンに与えられるすべての戦闘ダメージを軽減する。
フラッシュバック(2)(緑)(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを、そのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後それを追放する。)
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いよいよ本戦が始まった。



初日のスタンダードラウンドで使用したのは、予選で使った「短牙型8ヒッピー」だ。

ファイナルズ本戦ではプロプレイヤーの多くが「8ピッピ―」を選択していたが、それらはマナクリーチャーを擁するオーソドックスなタイプだった。



私は3回戦まで全勝で終えたものの、4回戦で当たった「けちコントロール」には僅差で敗北した。

本来、『けちコントロール』に対しては有利な構成であったし、実際に対戦相手を絶望的な状況まで追い込んだ。

しかし、彼はまさに「今日の人」だった。

「梅澤の十手」を装備した私の「惑乱の死霊」のみが場にある状況で、あと1回殴れば勝てるはずだったのだが、唯一の回答である「夜の星、黒瘴」を見事に引き当てられ、残りのライフが5であった私は「詰み」の状況となり、逆転敗北した。

ちなみに彼の「夜の星、黒瘴」はこれで3枚目。山札に残る最後の1枚だった。

4連勝目を目前に、絶対的に優位な状況から一瞬にして絶望に叩き落された私は、しばらく立ち直ることが出来なかった。



ちなみに彼はそのまま快進撃を続け、2日目にはトップ8に進出してしまった。

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夜の星、黒瘴 (4)(黒)(黒)
伝説のクリーチャー — ドラゴン(Dragon) スピリット(Spirit)
飛行
夜の星、黒瘴が死亡したとき、各対戦相手は5点のライフを失う。あなたは、これにより失われたライフに等しい点数のライフを得る。
5/5
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5回戦では齋藤友晴氏とマッチアップされた。

今では「晴れる屋」の代表として有名な御方だが、当時は起業前。強豪プレイヤーとして活躍する有名人だった。

私にとって、カバレッジによく出てくる有名プロに当たるのは、生まれて初めての経験だった。

彼が使っていた「スノウ・ストンピィ」というオリジナルデッキは、素晴らしいデッキだった。
「8ヒッピー」と同じく「クロックパーミッション戦略」をとるデッキだが、白の軽量クリーチャーによるビートダウンが主力であったため、「8ヒッピー」に対しても強い構成になっていた。
当時、多くのプロプレイヤーが「8ヒッピー」を選択していたが、おそらく「スノウ・ストンピィ」はその上位互換のデッキだ。

私は対戦中にも関わらず、この構成にたどり着けなかったことを悔やんでいた。



実際のゲームでは、斎藤氏が先手で「今田家の猟犬、勇丸」を展開し、2ターン目には「梅澤の十手」をプレイした。

私は1ターン目に「草むした墓」のみをプレイしていたが、「梅澤の十手」を見た時点で即座に投了した。
メインでは絶対に勝てない構成なのだ。

2本目にはサイドボードから大量の除去を入れてコントロールにシフトして挑んだが、斎藤氏は「草むした墓」だけで私のデッキを「8ヒッピー」だと看破し、適切なサイドボーディングをしてきた。

結果、見事に0-2で敗北した。



マッチ終了後、斎藤氏に「1本目に『草生した墓』をプレイせずに投了すべきだったんだろうか?」と声をかけてみたが、「あり得ないでしょ」との回答だった。
いずれにせよ「速いビートダウン相手に即座に投了するデッキ」という情報だけでも、ある程度は絞り込まれていたかもしれない。

この時の正解プレイは、今でも分からない。



【スノウ・ストンピィ(ファイナルズ05)】
http://mtgwiki.com/wiki/%E3%82%B9%E3%83%8E%E3%82%A6%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%94%E3%82%A3

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今田家の猟犬、勇丸 (白)
伝説のクリーチャー — 猟犬(Hound)
2/2
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梅澤の十手 (2)
伝説のアーティファクト — 装備品(Equipment)
装備しているクリーチャーが戦闘ダメージを与えるたび、梅澤の十手の上に蓄積(charge)カウンターを2個置く。
梅澤の十手から蓄積カウンターを1個取り除く:以下から1つを選ぶ。
・装備しているクリーチャーは、ターン終了時まで+2/+2の修整を受ける。
・クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで-1/-1の修整を受ける。
・あなたは2点のライフを得る。
装備(2)
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草むした墓
土地 — 沼(Swamp) 森(Forest)
((T):(黒)か(緑)を加える。)
草むした墓が戦場に出るに際し、あなたは2点のライフを支払ってもよい。そうしなかったなら、これはタップ状態で戦場に出る。
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初日で3-2となった私には、すでにトップ8の目は無かったのだが、まだ全勝すればトップ16となりマネーフィニッシュ出来る状況であった。



2日目のエクステンデッドラウンドでは、1回戦、2回戦と続けて『親和』に当たるも、「一瞬の平和」の力で勝利をもぎ取った。



そして、3回戦目。

プロプレイヤーの森勝洋氏と当たった。
その2週間前、「世界選手権2005」で世界王者となったプレイヤーだ。

当時の私は、有名プレイヤーとマッチアップするのを切望していた。
前回の「日本選手権05」ではそれが叶わなかったのだが、ファイナルズの初日で齋藤友晴氏とマッチアップできたことが本当に嬉しかった。
そこから続けて、あの世界王者とマッチアップできるというのは、望外の喜びだった。



さて、モリカツ氏が使っているのは、あの『フリゴリッド』だ。

このアーキタイプとの対戦は、練習を含めても初めての経験だ。
開始直後、私はフリゴリッドのダメージクロックの速さに舌を巻いた。このデッキは、本当にやばい。

そして、「数日前に練習しておくべきだった」と後悔した。



モリカツ氏のプレイングも的確だ。

こちらが最も嫌なタイミングで、「陰謀団式療法」を的確に当ててくる。

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陰謀団式療法 (黒)
ソーサリー
土地でないカード名を1つ選ぶ。プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは自分の手札を公開し、その名前のカードをすべて捨てる。
フラッシュバック ― クリーチャーを1体生け贄に捧げる。(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを、そのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後それを追放する。)
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しかし、それでも『フリゴリッド』の本質はビートダウンだ。「一瞬の平和」は『フリゴリッド』に対して劇的に強かった。



1-1で迎えた3本目、私は「一瞬の平和」や「正義の命令」で時間を稼ぎ、「歯と爪」をキャストして「白金の天使」と「レオニンの高僧」のコンボを決めた。

私が事前に確認した『フリゴリッド』のリストに「レオニンの高僧」と「白金の天使」の両方を対処できるカードは存在しない。

これで私の勝ちだ!!


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正義の命令 (X)(X)(2)(白)(白)
ソーサリー
白の4/4の飛行を持つ天使(Angel)クリーチャー・トークンをX体生成する。
サイクリング(2)(白)((2)(白),このカードを捨てる:カードを1枚引く。)
あなたが正義の命令をサイクリングしたとき、あなたは(X)を支払ってもよい。そうした場合、白の1/1の兵士(Soldier)クリーチャー・トークンをX体生成する。
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歯と爪 (5)(緑)(緑)
ソーサリー
以下から1つを選ぶ。
・あなたのライブラリーからクリーチャー・カードを最大2枚まで探し、それらを公開し、あなたの手札に加える。その後あなたのライブラリーを切り直す。
・あなたの手札からクリーチャー・カードを最大2枚まで戦場に出す。
双呪(2)(あなたが双呪コストを支払った場合、両方を選ぶ。)
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白金の天使 (7)
アーティファクト クリーチャー — 天使(Angel)
飛行
あなたはゲームに敗北することはなく、あなたの対戦相手はゲームに勝利することはない。
4/4
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レオニンの高僧 (3)(白)
クリーチャー — 猫(Cat) クレリック(Cleric)
あなたがコントロールするアーティファクトは、呪禁を持つ。(それらは、あなたの対戦相手がコントロールする呪文や能力の対象にならない。)
2/5
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ところが、モリカツ氏は投了するどころか、「セファリッドの円形競技場」や「綿密な分析」を使って、ものすごい勢いでドローを進めた。

まるで何かを探し当てるのを待っているかのようだ。

墓地に落ちた大量のカードの中には、私が事前に確認したリストに含まれていないカードもみられた。
どうやらモリカツ氏のサイドボードには、本人のオリジナル要素が入っている。




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セファリッドの円形競技場
土地
(T):(青)を加える。セファリッドの円形競技場はあなたに1点のダメージを与える。
スレッショルド ― (青),(T),セファリッドの円形競技場を生け贄に捧げる:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、カードを3枚引き、その後カードを3枚捨てる。この能力は、あなたの墓地にカードが7枚以上あるときのみ起動できる。
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綿密な分析 (3)(青)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、カードを2枚引く。
フラッシュバック ― (1)(青),3点のライフを支払う。(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを、そのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後それを追放する。)
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まずい雰囲気だ。

私は勝負を急がなければならないと感じた。



幸い、相手のライフは「湿った墓」や「綿密な分析」によるダメージでかなり少なくなっている。

ライブラリーアウトを待たずとも、「白金の天使」で数回アタックすれば勝利できる。

私は「白金の天使」をレッドゾーンに向かわせるため、カードに手をかけた。






その瞬間、一年前に聞いた「あの言葉」が頭をよぎった。





「普通にプレイしても勝てないゲームは、相手にミスらせて勝つしかない。」






ようやく私は、これが『罠』であることに気づいた。

モリカツ氏の手札は4枚。場には「ゾンビの横行」。

もしも彼が手札に「不可思議」を隠していたとすれば、私の「天使」は空飛ぶゾンビ達に打ち取られてしまうのだ。



私は「白金の天使」にかけた手をひっこめ、彼のライブラリーが尽きるのを最後まで見届けた。



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不可思議 (3)(青)
クリーチャー — インカーネーション(Incarnation)
飛行
不可思議があなたの墓地にあり、かつあなたが島(Island)をコントロールしているかぎり、あなたがコントロールするクリーチャーは飛行を持つ。
2/2
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マッチに勝利したにもかかわらず、これほどの戦慄を覚えた試合など、後にも先にもこの一度きりだ。

冷静に考えてみれば、あの場面で「白金の天使」をアタックさせるプレイなど、絶対にあり得ないミスだ。罠にかかりそうになったのは「私が未熟だったから」と言われれば、その通りだろう。

だが、彼は間違いなくその「あり得ないミス」を意図的に誘い、あと一歩で完遂するところだった。

そうさせるほど、世界チャンピオンのプレッシャーはすさまじかった。



山岸裕一という同種のプレイヤーと出会っていなければ、間違いなく負けていただろう。




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ファイナルズでは、もう一つ事件があった。

佐藤さんが「トップ8」に入ったのだ。

準決勝で中村修平プロの『服部半蔵トロン』に負けてしまったが、ファイナルズトップ4というのは北陸のプレイヤーとしては快挙だった。




私はといえば、2日目の最終戦で有名プレイヤー三田村氏の『赤単ゴブリン』に敗北し、7-3という結果でファイナルズ本戦を終えた。

相性は悪くなかったが、私のゴブリンに対する理解度が低かったことで、適切なサイドボーディングが出来なかったことが敗因だ。

今回はいずれのデッキも自信作だっただけに、この結果は悔しかった。



しかしその一方で、関東や関西のプレイヤーに対しても、私たちは十分に戦えることを示せたと思う。

少なくとも、構築フォーマットは北陸のプレイヤーでも十分に通用する。



そう確信し、私たちは北陸へ帰るのであった。

もちろん、「しりとり」をしながら。










次回、【チーム・スタンダード】につづく




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その1
https://79315.diarynote.jp/202005281438039466/
その2
https://79315.diarynote.jp/202005282109337729/
その3
https://79315.diarynote.jp/202005291508229270/
その4
https://79315.diarynote.jp/202005292314292375/
その5
https://79315.diarynote.jp/202005302359514730/
その6
https://79315.diarynote.jp/202005302359514730/
その7
https://79315.diarynote.jp/202006010007355270/
その8
https://79315.diarynote.jp/202006012037399411/
その9
https://79315.diarynote.jp/202006022041509668/
その10
https://79315.diarynote.jp/202006052349054192/
その11
https://79315.diarynote.jp/202006091440041602/

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